アレッポとは?



アレッポはシリア・アラブ共和国の古都で同国首都のダマスカスと並んで世界最古の都市です。

その歴史は古く、考古学的な研究により紀元前から歴史があることが判っています。肥沃な三日月地帯の中心として栄え、農産物・加工品等、様々な商品がアレッポに集まる産業の中心地です。

  • アレッポ城
  • かつてのスーク

アレッポはアラビア語で“乳”を意味する“ハラブ”と呼ばれていて、預言者のアブラハムがこの地で羊の乳を施しとして分け与えたことに起源するそうです。(出典1)

古くから交易の要衝として栄え、ある時代は一国の首都になることもありました。旧市街全体が世界遺産に指定されていましたが、特に有名なのはアレッポの中心にある ”アレッポ城” それに ”スーク”(市場)でしょう。

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  • 石鹸スークの入口

スークは古代ローマ時代から始まる市場で、まるで迷路の様に入り組み石造りのアーケードに覆われた道に無数の商店が軒を連ねていました。行き交う人々とロバなどの動物、呼び込みの声と定刻にあちこちのモスクから謳われるアザーン(ムスリムにお祈りを呼びかける声)が入り混じり熱気を孕んでいました。

2階にはかつてのシルクロード交易を思わせるキャラバンサライという隊商宿があり、まさに生きた遺跡でした。またスークにはKHAN AL SABUNという一角があり、間口一軒ぐらいの石鹸屋さんが軒を連ねていました。

残念ながら2011年からのシリア内戦により破壊されてしまいましたが、古くから交易の十字路であったアレッポにおいて、スークは中心的な存在でした。

スークの石鹸売り場

[アレッポの石鹸の歴史]のページ中にも記述がありますが、この地域でアルカリの精製方法が発明されたこと、オリーブオイルやローレルオイルの産地だったこと、交易地だったことにより、石鹸産業は古くから続く地場産業でザナビリ、ジュバイリ、ファンサなど、有名な石鹸メーカーの他にもたくさんの石鹸工場がアレッポにありました。

日本酒の酒蔵ととてもよく似ていて、大小様々な酒蔵がそれぞれこだわりを持って日本酒を作るように、アレッポの石鹸メーカーもそれぞれがこだわりを持って石鹸を作っているのです。工場は社主を中心に石鹸づくりを統括しています。

そして釜炊き・カッティング・クリーニングの各工程それぞれを受け持ちの一族が代々担ってきました。
昔はクッキングシーズンの11月~2月まで農閑期の村の人が働きに来ていたそうですが、現在では石鹸のクリーニング、パッキングなど、熟成後の作業もあるため一年中仕事があります。


  • 内戦により2012年からアレッポの電気・水道などのインフラが破壊され、石鹸製造が困難になりました。

    戦闘の激化により、昔より続いていた石鹸メーカーは石鹸作りをやめてしまったところもあります。アレッポで石鹸を作る事ができずシリアの他の都市やトルコなど外国へと逃れ、新しい地で石鹸づくりを再開させた工場もあります。

    弊社の石鹸を製造しているアデル・ファンサ社は2014年アレッポから地中海の港湾都市ラタキアに仮の工場を構え、生産を再開しました。

ラタキアに疎開しながら石鹸を製造するスタッフの皆さん(右端が社主のタラール・ファンサ氏)

内戦状態の中、品質水準を向上させるために品質管理基準ISO9001も取得しています。
2021年初頭、爆撃でほぼ全壊していたアレッポのファンサ工場は修復を終え、試運転が行われました。
2021年暮れから始まるクッキングシーズンには9年ぶりにアレッポのアデル・ファンサ工場が動き出します。

※出典
1『石けんの本』三水社 / 三木春逸、三木晴雄著
2『イスラム技術の歴史』平凡社 / アフマド・Y・アルハサン、ドナルド・R・ヒル著 / 大東文化大学現代アジア研究所監修 / 多田博一、原隆一、斎藤美津子訳
3『商人たちの共和国』藤原書店 / 黒田美代子著