アレッポの石鹸の歴史


昔のアレッポの風景(時計塔)

アレッポでは1000年も前から石鹸が作られていたと言われています。

石鹸の起源には諸説あります。ナイル川での泥パックやローマのサボーニの丘の話など、一番古い物ではメソポタミア文明の頃楔形(クサビガタ)文字で粘土板に石鹸の処方箋が刻まれています。(出典1)

今日あるような固形石鹸の誕生は、アルカリの精製方法が発見されるのを待たなければなりません。
1000年前の旅行家で医者のアブー・バクル・アッラージの『秘密の書』にはアルカリと苛性ソーダの抽出方法、さらには固形石鹸の作り方までが詳しく書かれています。(出典2)

この時代から石鹸作りは行われ、地域の地場産業として発達していったようです。

出来立ての石鹸と刻印

固形石鹸(ナトリウム石鹸)はオイルにアルカリ(苛性ソーダ・水酸化ナトリウム)を加えて作ったものです。
アルカリはこの地方特有のシナーンというアカザ科の灌木と豊富にとれる石灰から精製されます。

アレッポの工場でも、実に1950年ごろまでこの方法で石鹸が作り続けられていました。
古い石鹸製造方法を教えて欲しいと、2003年私たちが石鹸を輸入しているアデル・ファンサ社の社主アデル・ファンサ氏を訪問した時、彼は実演をしながらこう言いました。

「私が20歳のころまではこの方法でアルカリを作っていたよ、息子たちが見るのも初めてだろう。」

砂漠に自生するシナン



※出典
1『石けんの本』三水社 / 三木春逸 / 三木晴雄著
2『イスラム技術の歴史』平凡社 / アフマド・Y・アルハサン、ドナルド・R・ヒル著 / 大東文化大学現代アジア研究所監修 / 多田博一、原隆一、斎藤美津子訳