現在の石鹸作り


大事なのは素材・釜炊き・熟成

使用オイル

オリーブの収穫

・オリーブオイル

  • 2番絞りのオリーブオイル

  • オリーブオイルは11月頃から収穫されます。

    地中海性気候と砂漠から吹く乾燥した空気が混じり合う上、4月から10月までほとんど雨が降りません。そのためシリアのオリーブは虫がつきにくく、良質なオリーブオイルが収穫されます。

    石鹸に使われるのは食用のオイルを搾り取った後さらに搾り込んだオイルを使用します。保湿成分のスクワレンなどを多く含み、酸度が高いために石鹸素材に向いています。
    とても濃い緑色をしていて、オリーブの匂いも非常に強く、素材感の強い石鹸が作られます。
    アレッポの石鹸の内部が緑色をしているのもこの為です。

・ローレルオイル

  • 清々しい香りを放つ自生するローレル(月桂樹)

  • 清々しい香りのオイルの王様。

    ローレルの果実はシリア北部とトルコ南部の地中海沿岸から黒海にかけて山岳地域に自生しており、季節になると村々で収穫されます。
    オスの木とメスの木があり適正な気候でないと結実しないため、世界でも希少なオイルです。

  • 清々しい森の香りがするこのオイルは体臭を抑えお肌の健康を保ちます。古来より石鹸の材料として重宝されてきました。

    実の重量のうち10%のみがオイルで、搾油はローレルの実を潰しながら水で炊き、浮いてきた油を掬い取るというものでした。
    現在ではコールドプレスのものも使用されます。

  • ローレルオイルの搾油

製造工程

オイルが新鮮な冬とその寒さを利用して釜炊きが行われ、春から秋にかけての熱く乾いた空気で熟成が行われます。

1)釜炊き

石鹸素地を製造する釜

釜炊きは11月下旬から2月の冬季のみ行われます。
3昼夜オリーブオイルとローレルオイルにアルカリを加えて熱を加えながら練り込んでいきます。
釜炊きはその時のオイルの状態や気温など状況に左右されるため、とても勘の必要な熟練の作業です。

2)塩析

釜炊き

釜炊きの最中、なるべく保湿成分など有効な成分を残しながら、水を加えて不純物(石鹸にならない成分や余分なアルカリ)を洗います。
仕上がりは指に石鹸素地をつけ、口に含んで確かめます。

3)石鹸素地の流し込み

熱々の石鹸素地を敷き均す

清掃された床に紙を敷き、熱々の石鹸素地を高さを揃えながら流し込んでいきます。

4)カッティング・スタンピング

アレッポの伝統的なカットスタイル

  • 石鹸切断器

  • 石鹸にスタンプを打つ作業

冬の真夜中、寒さで適度に固まった石鹸素地をカットします。
大人6人ほどが、子供を乗せた石鹸切断機を息を合わせながら引っ張ります。
切断機についている等間隔に並んだ歯が柔らかい石鹸を綺麗にカットしていきます。
カットが済むと刻印を打ち込んでいきます。

5)熟成

熟成のために積み上げられた石鹸

石鹸の隙間を開けて風通しをよくしながら積み置いていきます。
一年以上熟成させることで表面の緑色はベージュ色に変化し、余分な水分は抜けて硬く溶けにくく、マイルドな石鹸になっていきます。

6)清掃・パッキング

出荷のために清掃する作業

熟成が終わった石鹸の底についている紙を取り、積もった埃などを綺麗に清掃しパッキングします。

※現地ではパッキングせず、量り売りで販売します。
その時、お客様に石鹸の品質を確認してもらうために見本をカットして中を確認してもらうこともあります。

現地での詳しい石鹸切断方法はこちら→【現地の石鹸切断方法】

石鹸の伝統を今につないでくれたアデル・ファンサ氏2019年1月撮影 2020年没享年93歳